スヌーズレン/Snoezelen


 スヌーズレンは、1970年代にオランダでJan Hulsegge & Ad Verheulが実践した多重感覚環境を示す。1970年代頃の重度知的障害者は、看護士がパジャマ姿の利用者を医療的介護のみを行うだけで、1日中ベッドで横たわっているような状況におかれており、全く刺激のない受け身的な世界にいるのが一般的であった。重度知的障害者の施設の指導者であったHulsegge & Verheulは、2人の音楽療法や芸術セラピーなどの専門を生かし、レクリエーション活動の一環として多重感覚環境を考案した。最初は、アクティビティテントと呼ばれる農業資材を保管する小屋を利用して、室内の各所に五感を刺激する様なコーナーを設け、その中を通り抜けながら保護者と一緒に楽しむレクリエーションを実践した。

 現在では、元ドイツ・フンボルト大学のKrista Mertensが、スヌーズレンを「特別にデザインされた環境の中で、コントロールされた多重感覚の刺激を通して、幸福感を産出するものである。」と位置づけ、その実践を追求した結果、環境(器材)・利用者・介護者(指導者)の三項関係のバランスが重要であると提唱している。特に五感を穏やかに刺激する環境下において、利用者と介護者(指導者)との共感を含めたコミュニケーションが重要であるとされている。その適用範囲は、リラクゼーションを目的としたレジャーとしての活用、教育効果を高めるための教育としての活用、脳神経学に基づく非薬物療法の一環としたセラピーとして活用の3分野での活用が考えられている。

 一方、日本では1990年代前半に海外の実践事例を参考に重症心身障害児施設内の空き部屋を使って手作りでのスヌーズレンルームが作られたのが始めとなる。そこから国内における重症心身障害児施設や特別支援学校などにスヌーズレンルームが導入される様になった。しかし、導入の経緯が利用者のレクリエーションの一環として捉えられていた為に、実践事例は多く発表されているものの科学的根拠を示すエビデンスを明らかにした研究については諸外国に比べて極端に少ない。また、前述に示す通り、スヌーズレンは環境(器材)・利用者・介護者(指導者)の三項関係のバランスが重要であるとされているが、国内におけるスヌーズレンに関する環境及び器材の研究開発は、導入されて30年以上経つが全く行われていないのが現状である。

 嶺研究室では、2015年度からこの三項関係の内のスヌーズレンの環境や器材を中心として川越商工会議所・異業種交流グループKOEDO会と産学連携による共同研究を行ってきた。特にスヌーズレン器材の三種の神器の1つとも言われている「バブルチューブ」を国産スヌーズレン器材として開発しているところである。バブルチューブの仕組みとしては、アクリルチューブの中に水を満たし、下からエアーポンプで気泡を出しながらLEDランプの光を当てることで幻想的な雰囲気になり、LEDランプに照らされた上昇する気泡が視覚を刺激し、気泡が出る時の音やエアーポンプの振動によって聴覚や触覚を刺激するスヌーズレン器材である。企業との共同研究によって開発したバブルチューブの製品評価を行うために、障害者施設や特別支援学校などに約3ヶ月程度の一定期間貸与して、利用者が使用したときの変容なども含めた記録を行うモニター評価を行っている。

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嶺研究室とスヌーズレン研究

嶺研究室とスヌーズレンとの出会いは、ゼミ合宿in沖縄で発達支援センター・ぎんばるの海を訪問した時に、施設内のスヌーズレンルームに興味を持ったゼミ生が卒業研究のテーマとして取り上げたことから始まります。そこから産学連携推進課より川越商工会議所・異業種交流グループKOEDO会から福祉の最新情報を知りたいとのことで講義の要請があり実施しました。講義内容を検討しましたが、対象が異業種交流会の企業様向けでしたので、ビジネスに繋がる内容が必要であると考え以下の2つのテーマで議論しました。

①子供の図形認識能力向上を目的とした型合わせパズル

②レクリエーションとしてのスヌーズレンを提案するライト

そうしたところ②のスヌーズレン器材の開発に向けてに興味を持たれました。それは偶然にもKOEDO会メンバー企業の中でスヌーズレン器材のバブルチューブに使われているアクリルパイプを製造している企業が講義に参加していました。また、スヌーズレン器材は様々なものがありますので、KOEDO会のメンバー企業が開発に参加できる可能性が高いと判断されたからです。こうして嶺研究室での産学連携によるスヌーズレン器材の開発が本格的にスタートしました。



新開発スヌーズレン器材
(機関車スヌーズレン器材/消防車スヌーズレン器材)

東洋大学工業技術研究所の2018年度産学連携プロジェクト研究予算を獲得して機関車スヌーズレンと消防車スヌーズレンを開発しました。コンセプトは、スヌーズレンルームを確保できない施設やスヌーズレンルームにまで行けない重度の障害を持つ子供達、または、病院で長期入院してベッドから出れない子供達などを対象とした「お届けするスヌーズレン!」です。

開発した機関車スヌーズレンは、早速、「テイ・エステック株式会社」様がご購入され、朝霞社会福祉協議会・はあとぴあ福祉作業所に寄贈されました。また、朝霞キャンパスの前にあるTMGあさか医療センターに設置してお試しい頂きました。今後は、埼玉医大に隣接するカルガモの家(医療型障害児入所施設)でモニター評価を実施する予定です。

この機関車スヌーズレン/消防車スヌーズレンのお試しをご希望でしたら、いつでも嶺研究室までお問い合わせください。



新開発スヌーズレン器材

 

東洋大学工業技術研究所の2017年度プロジェクト研究予算を獲得してマインドテクノ社のバブルチューブを2台購入し、障害者施設に3ヶ月程度設置してモニター評価を実施しました。マインドテクノ社のバブルチューブの特徴は、大小2種類の泡を切り替えて出すことができます。また、アクリルチューブの直径や長さ、台座の大きさなどをオーダーできます。光源も自社製のものを使っており、とても明るいのが特徴です。



新開発スヌーズレン器材

(縦列LED配置バブルチューブ)

 

東洋大学工業技術研究所の2016年度プロジェクト研究予算を獲得して新型のバブルチューブを開発しました。この特徴は、チューブを2重管にしてLEDランプを縦列に配置するデザインにしました。また、チューブ内にアクリルアイスを入れることで単一の穴から出る気泡を散らすことができました。従来品と違いとしては、LEDからの直接光になり光癲癇の懸念がありましたが、開発から3年経った現在でもご利用頂いておりますが利用者からの光癲癇の発症の報告はありません。この様な縦列LED配置のバブルチューブは従来品にはない世界初のデザインとなります。

 

 



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